そりゃないぜセニョール ～アホナ訪問販売者

変な奴が家に来た。

「あのー、下水道の点検でご近所周らせてもらってるんですが、マンホール開けさせてもらっていいですか？」

いつもならこういう手合いは無視しているのだが、その男が意外とイケメンで愛想のよかった事が油断を生んだ。
「はあ、どうぞ」


男は家のマンホールを開けてこう言った。
「ああ、だいぶ汚れてますねえ。洗浄とかしてらっしゃいます？」
「さあ、してないんちゃうかなあ」
「この汚れ、油なんですよ。あと、これ虫、卵生みつけてますねえ。家ゴキブリとか出ません？」
「（そらそんなとこ虫ぐらいおるやろ）　いや、全然出ないけど。」
実際、俺の家は古い家にも関わらずゴキブリは出ない。

「今、洗浄させてもらってますけどどうですか？」
「いくらかかるの？」
「そんなにかからないですよ。」
「（だからいくらやねん）　あの、あなたどこの人ですか？」
「ええ。今この町内周らしてもらってるんですけど」

完全に怪しい。

「あ、町が派遣してる業者ですか？」
「違います。1年に一度こちら来させてもらってます。」

名札を見たら京都の会社だと書いてある。
「京都の会社なんですか？」
「そうです、京都・大阪・滋賀と回らせてもらってます」
「（だから名を名乗れ）　はあ、じゃとりあえず見積もりしてください」
俺は、見積もりの値段を聞いて、高くても安くても断るという、定番のストーリーを組み立てた。しかし、そうは問屋がおろさない。

「いや、頼んでもらえるんだったら後日見積もりさせてもらいますけど。とりあえず今作業させてもらえますよ。あとで銀行振込もできますし。」
「（笑・・順序が逆やろ）　いや、見積もりないと返事のしようがないでしょ」
「いや、頼んでもらえるんやったら見積もりしますって」
あきらかに相手の顔がだんだん赤くなっているのがわかった。口調も荒くなってきた。

「じゃあ、家の者と相談しますから、名刺ください。後日連絡しますから。」
「いや、名刺はありますよ。でもね、今やってくれはるんやったら出張費いらないでしょ。次一年後ですよ」
あきらかに男は軽くキレてる様子だった。名刺もくれない。

しばらく黙って
「じゃあ、マンホール閉めさせてもらいますわ。そこどいてください」
とふてくされた様子で男は言った。

逆ギレもいいとこである。その態度がムカついたので僕は
「じゃあ、また一年後」
と言ってやった。

男は振り返りもせず町内の影へと消えて行った（いずこへ？）。

押し売り失格クンである。
まず、下水道が汚いのはあたりまえである。なんで、虫がいるとだめなのか、なんで汚いと駄目なのかもっと教えてくれ。
それに値段も言えないのか？「他のお宅でしたらだいたいウン千円からですけど・・・」と言いながら、ウン万円とるのが押し売りの腕の見せ所じゃないのか。
それにもし洗浄しなければならんのなら、俺は間違いなく近所の業者に頼む。
一年に一回しか来ない業者に頼むアホはおらん。
まあ、暇つぶしにはなったが。

押し売り失格な人はたまに来る。
以前、一人暮らしの部屋に宗教の勧誘が来た。
女性二人組である。
「この世には不幸な方がたくさんいらっしゃいますが、どのようにお考えですか？」
などとお決まりの説教を延々とされたのだが、話すのは一人だけで、もう一方の女性はあきらかに下をうつむいて俺と目も合わそうとせず、頬もこけ、どう見ても幸薄そうだった。
ベシャリ担当の女性の言葉は、そのうつむいてる女性へ向けているような気がした。

みなさん気をつけましょう（引っかかる奴いないか・・・）