辞書連想 第四回 「白帝城」
- 2005/01/11
- 15:21
はくていじょう 【白帝城】 ・・・・
(1)中国四川省東部、揚子江中流北岸にあった城。三国時代に蜀(しょく)の劉備が諸葛亮(しょかつりょう)に後事を託して没した所。
(2)愛知県犬山市にある犬山城の別名。
(初めての方は、本編の前に辞書連想「はじめに」を読んでください)
++++++++++++++++++++++++++++++++
― 偉大なる横山光輝先生に捧ぐ ―
三国志ファンってのは語りたがる人が多い。実は僕もその一人なのだが、興味の無い人には全くつまらない話だろうと思う。
これは親友Jの話だが、中学の時、彼は3人グループでよく遊んでいたという。しかし、Jを除く二人は三国志に詳しく、その話題になるとJをほったらかして二人だけで語り始めるため、Jは会話が三国志の方向へ変わりそうになると、話題を変えよう変えようと毎日必死になっていたそうだ。
何故、彼らは興味も無い人を無視してでも語るのだろう。他人が全然興味持ってない事に気づかないのだろうか。
+
僕が三国志に興味を持ったのは親父が持っていた横山光輝の漫画からで、これは子どもの頃の愛読書だった。10歳くらいの時だから、ダウンタウンの関西ローカル番組「4時ですよ~だ」を毎日楽しみにしていた頃だ。
知らない人のために簡単にどんな話かを書こう。舞台は今から1700年前の中国。んな事いわれてもピンと来ないだろうけど、日本では邪馬台国の頃だ。んな事言われてもまだピンとこないけど、まあ日本にも国家というものができかけていた頃だ。
その頃、中国では「漢」という国が治めていたが衰退し始めたため、国は荒れ、多くの武将たちが独自に自分の領地を治める戦乱の世だった。
戦いの末、中国はやがて三つの国にまとまっていくのだが、その中で主人公的扱いをされるのが「蜀」という国の「劉備(りゅうび)」という男である。彼は民衆に優しく、義理人情に厚い人柄だったが、自分の義兄弟の仇を果たす前に戦に敗れて死んだため、悲劇の主人公として民衆に好まれた。
こう書くと、この劉備という人物はさぞ美男子で頭も切れる男かと思うだろう。漫画ではもちろん男前に描かれているが、実際にはこう語り継がれている。
「身長7尺5寸(2m超)、両耳が肩まで垂れていて、目で自分の耳を見ることができた。
手は膝の下まで届く長さがある。顔は白玉のよう、唇は紅を差したようだった。学問はあまり好まず、喜怒を顔に出さない。」
あんがー。こんな奴おるんか。水野晴郎もびっくりの福耳で、鈴木その子(懐かしい)もビックリの色白である。まあこういう逸話みたいなのはいつでもおおげさになるもんだが、これじゃあまり感情移入できない。ここからは、劉備の顔はタッキーで想像してください。

<横山光輝 「三国志」潮出版社>
+
さて、ここまで大丈夫だろうか。まだ食いついている人はいるだろうか。ああ、女性たちが遠のくのが見える。まあいい。ここからは男の世界だ!ロマンだ!ロマンスだ!(それは違う)
+
白帝城は、その劉備が諸葛亮(しょかつりょう)に全てを託し、息を引き取った場所である。諸葛亮というのはその後の蜀を背負って立った名軍師で、いわゆる天才だった。
劉備が死んだ時点で、この物語の主人公は諸葛亮に代わる。これは子どもながらに衝撃だった。何故か分かるだろうか?
北斗の拳で、ケンシロウが死んでバットが主人公になったらショックだろう。ドラゴンボールで悟空が死んで悟飯が主人公になったらショックじゃないか!
諸葛亮は劉備の意思を引き継ぎ、国を統一するための戦いに出る。しかし夢果たせず、病に倒れやはり死んでしまう。なんなんだ!また主人公死んだ!
諸葛亮の死後、その意志を姜維(きょうい)という男が引き継ぐのだが、その頃には「蜀」は衰退していた。やがて彼も戦いに敗れ、「蜀」という国自体が滅びてしまう。なんなんだ!滅びるなよ!
さらに語るべきは、劉備の血を受け継いだ息子の劉禅(りゅうぜん)である。
劉禅はオバカさんだった。バカ殿だった。父親の血が流れているとは思えないほど、無知で人間的な魅力も無かった。
「蜀」が攻められると、彼は何の抵抗もせずに敵に降伏して配下となり、一生を何の苦労もせずに暮らしたという。なんなんだ!仇討てよ!
+
横山光輝の三国志はここで完結する。なんと悲しい終わり方だ。はかない。はかなすぎるじゃないか。
もちろん、歴史モノなのだから、こういう事は当たり前なのだが、「いいもんは必ず生き残ってわるもんをやっつける」という価値観が僕の中でくずれさった。10歳の子どもには酷である。
三国志の物語は、日本人向けかもしれない。日本人は悲劇が好きだ。
日本を統一した家康や秀吉よりも、夢半ばに破れた信長の方を好む。
幕府を作った兄よりも、若くして死んだ義経を好む。
サクサクでホクホクよりも、最後に残ったカリカリのフライドポテトを好む(違うか・・)。
同じように、この劉備という男には魅力がある。福耳おじさんで、猿みたいに腕は長くても人間的な魅力があった。
白帝城にて息を引き取る時、彼は諸葛亮にこう言った。「もし、息子に国を治める力が無かったら、君が息子の代わりに帝位に座って(君主になって)、この国を治めてくれ」と。
諸葛亮はこう返す。「私は、あなたの家来として、自分の命に換えてもその意志を引き継ぐ」と。
中国の歴史というのは、裏切り・反逆の歴史だった。常に前の国を蹴落とす事で続いてきた国だ。しかし、この二人の会話には、そういった気持ちが一切無い。死ぬまで、民衆の事を思い続けた劉備とその気持ちを汲んだ諸葛亮。まるで親子のようで青春ドラマのようだ。
実際に諸葛亮は劉備の死後、言葉通りに死ぬまで戦い続けた。
いい・・・。こういう所が実に日本人好みなのだろう。
昨年、横山光輝先生は亡くなられたが、ありがとうと言いたい。
・・・・・あ、やっぱり語ってしまった!
(おしまい)
+++++++++++++++++++++++++++++++
今回は知ってる事だけに、普通に書きました。三国志って日本人が描くとすごく面白くなるのよね。横山光輝の漫画が面白いのは、歴史より、「人間」を描いているからだろうね。中国人がたまに映像化してるけど、事実を追ってるだけでつまんないのね。ああ、まだ語ってる。
あと、知らない人のために書いておこう、横山光輝は、「魔法使いサリー」や「鉄人28号」「バベル2世」などを描いた偉大な漫画家なのです。
さて、次。どうせなら劉備の死んだ日にしようか。223年の・・・調べても日にちがわからない・・・。
では、敬愛する横山光輝先生の亡くなられた日に。
2004年4月15日 > 2004ページ4段15行 = 「はんみょう」
おお、はんみょう!虫嫌いの僕が、珍しく好きな虫の種類だ。立て続けにいいの引いた。ハ行ばっかりだけど。
次のお題・・・「はんみょう」
(1)中国四川省東部、揚子江中流北岸にあった城。三国時代に蜀(しょく)の劉備が諸葛亮(しょかつりょう)に後事を託して没した所。
(2)愛知県犬山市にある犬山城の別名。
(初めての方は、本編の前に辞書連想「はじめに」を読んでください)
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― 偉大なる横山光輝先生に捧ぐ ―
三国志ファンってのは語りたがる人が多い。実は僕もその一人なのだが、興味の無い人には全くつまらない話だろうと思う。
これは親友Jの話だが、中学の時、彼は3人グループでよく遊んでいたという。しかし、Jを除く二人は三国志に詳しく、その話題になるとJをほったらかして二人だけで語り始めるため、Jは会話が三国志の方向へ変わりそうになると、話題を変えよう変えようと毎日必死になっていたそうだ。
何故、彼らは興味も無い人を無視してでも語るのだろう。他人が全然興味持ってない事に気づかないのだろうか。
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僕が三国志に興味を持ったのは親父が持っていた横山光輝の漫画からで、これは子どもの頃の愛読書だった。10歳くらいの時だから、ダウンタウンの関西ローカル番組「4時ですよ~だ」を毎日楽しみにしていた頃だ。
知らない人のために簡単にどんな話かを書こう。舞台は今から1700年前の中国。んな事いわれてもピンと来ないだろうけど、日本では邪馬台国の頃だ。んな事言われてもまだピンとこないけど、まあ日本にも国家というものができかけていた頃だ。
その頃、中国では「漢」という国が治めていたが衰退し始めたため、国は荒れ、多くの武将たちが独自に自分の領地を治める戦乱の世だった。
戦いの末、中国はやがて三つの国にまとまっていくのだが、その中で主人公的扱いをされるのが「蜀」という国の「劉備(りゅうび)」という男である。彼は民衆に優しく、義理人情に厚い人柄だったが、自分の義兄弟の仇を果たす前に戦に敗れて死んだため、悲劇の主人公として民衆に好まれた。
こう書くと、この劉備という人物はさぞ美男子で頭も切れる男かと思うだろう。漫画ではもちろん男前に描かれているが、実際にはこう語り継がれている。
「身長7尺5寸(2m超)、両耳が肩まで垂れていて、目で自分の耳を見ることができた。
手は膝の下まで届く長さがある。顔は白玉のよう、唇は紅を差したようだった。学問はあまり好まず、喜怒を顔に出さない。」
あんがー。こんな奴おるんか。水野晴郎もびっくりの福耳で、鈴木その子(懐かしい)もビックリの色白である。まあこういう逸話みたいなのはいつでもおおげさになるもんだが、これじゃあまり感情移入できない。ここからは、劉備の顔はタッキーで想像してください。

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さて、ここまで大丈夫だろうか。まだ食いついている人はいるだろうか。ああ、女性たちが遠のくのが見える。まあいい。ここからは男の世界だ!ロマンだ!ロマンスだ!(それは違う)
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白帝城は、その劉備が諸葛亮(しょかつりょう)に全てを託し、息を引き取った場所である。諸葛亮というのはその後の蜀を背負って立った名軍師で、いわゆる天才だった。
劉備が死んだ時点で、この物語の主人公は諸葛亮に代わる。これは子どもながらに衝撃だった。何故か分かるだろうか?
北斗の拳で、ケンシロウが死んでバットが主人公になったらショックだろう。ドラゴンボールで悟空が死んで悟飯が主人公になったらショックじゃないか!
諸葛亮は劉備の意思を引き継ぎ、国を統一するための戦いに出る。しかし夢果たせず、病に倒れやはり死んでしまう。なんなんだ!また主人公死んだ!
諸葛亮の死後、その意志を姜維(きょうい)という男が引き継ぐのだが、その頃には「蜀」は衰退していた。やがて彼も戦いに敗れ、「蜀」という国自体が滅びてしまう。なんなんだ!滅びるなよ!
さらに語るべきは、劉備の血を受け継いだ息子の劉禅(りゅうぜん)である。
劉禅はオバカさんだった。バカ殿だった。父親の血が流れているとは思えないほど、無知で人間的な魅力も無かった。
「蜀」が攻められると、彼は何の抵抗もせずに敵に降伏して配下となり、一生を何の苦労もせずに暮らしたという。なんなんだ!仇討てよ!
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横山光輝の三国志はここで完結する。なんと悲しい終わり方だ。はかない。はかなすぎるじゃないか。
もちろん、歴史モノなのだから、こういう事は当たり前なのだが、「いいもんは必ず生き残ってわるもんをやっつける」という価値観が僕の中でくずれさった。10歳の子どもには酷である。
三国志の物語は、日本人向けかもしれない。日本人は悲劇が好きだ。
日本を統一した家康や秀吉よりも、夢半ばに破れた信長の方を好む。
幕府を作った兄よりも、若くして死んだ義経を好む。
サクサクでホクホクよりも、最後に残ったカリカリのフライドポテトを好む(違うか・・)。
同じように、この劉備という男には魅力がある。福耳おじさんで、猿みたいに腕は長くても人間的な魅力があった。
白帝城にて息を引き取る時、彼は諸葛亮にこう言った。「もし、息子に国を治める力が無かったら、君が息子の代わりに帝位に座って(君主になって)、この国を治めてくれ」と。
諸葛亮はこう返す。「私は、あなたの家来として、自分の命に換えてもその意志を引き継ぐ」と。
中国の歴史というのは、裏切り・反逆の歴史だった。常に前の国を蹴落とす事で続いてきた国だ。しかし、この二人の会話には、そういった気持ちが一切無い。死ぬまで、民衆の事を思い続けた劉備とその気持ちを汲んだ諸葛亮。まるで親子のようで青春ドラマのようだ。
実際に諸葛亮は劉備の死後、言葉通りに死ぬまで戦い続けた。
いい・・・。こういう所が実に日本人好みなのだろう。
昨年、横山光輝先生は亡くなられたが、ありがとうと言いたい。
・・・・・あ、やっぱり語ってしまった!
(おしまい)
+++++++++++++++++++++++++++++++
今回は知ってる事だけに、普通に書きました。三国志って日本人が描くとすごく面白くなるのよね。横山光輝の漫画が面白いのは、歴史より、「人間」を描いているからだろうね。中国人がたまに映像化してるけど、事実を追ってるだけでつまんないのね。ああ、まだ語ってる。
あと、知らない人のために書いておこう、横山光輝は、「魔法使いサリー」や「鉄人28号」「バベル2世」などを描いた偉大な漫画家なのです。
さて、次。どうせなら劉備の死んだ日にしようか。223年の・・・調べても日にちがわからない・・・。
では、敬愛する横山光輝先生の亡くなられた日に。
2004年4月15日 > 2004ページ4段15行 = 「はんみょう」
おお、はんみょう!虫嫌いの僕が、珍しく好きな虫の種類だ。立て続けにいいの引いた。ハ行ばっかりだけど。
次のお題・・・「はんみょう」
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